2019年6月に、投資企業管理局(DICA)およびミャンマー・センター・フォー・レスポンシブル・ビジネス(MCRB)から「職場におけるミャンマーの文化を尊重しましょう(Respecting Myanmar Culture in the Workpalce)」なる資料が発表された。
ミャンマーの文化と行動規範を包括的に解説した冊子で、ミャンマーで働く外国人投資家やビジネスパーソンが職場において気をつけなくてはならない文化や規範について説明している。
今回はこの資料を題材に、ミャンマーで働く際に、注意しなければならない「異文化」理解について書いていきたい。
これは、他の東南アジア各国で働く場合の参考になると考える。
小生は大手小売業イオンの駐在員として香港、マレーシア、ベトナム、ミャンマーにトータルで12年滞在。
各国で商品部や新規合弁事業の管理担当を歴任。
現在は独立、ミャンマーの最大都市ヤンゴンに居を構え、新規事業のスタートを準備している。
異文化を理解するためには

ミャンマーの事例を紹介する前に一冊の本を紹介したい。
海外で活躍する方はもとより、これからさらに進むグローバル化の中で、日本にいながらにして、様々な国の方々とコミュニケーションを取らなくてはならない場合に必要な「異文化理解」について書かれた書籍である。
非常に実践的な本で東南アジアにかかわらず、どんな文化圏の場合でも応用がきく手法を伝授してくれる。
ミャンマーのケースもこの手法を前提として考察していきたい。
異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 Kindle版
エリン・メイヤー (著), 田岡恵 (著), 樋口武志 (翻訳) 英治出版 発売日 : 2015/8/22
語学力より不可欠なもの
海外出張、海外赴任、外国人の取引先・上司・同僚・部下とのコミュニケーション…本当に大切なのは、英語力よりも、「異文化理解力」だった!
ビジネスにおける異文化理解に特化
学術的な視点が強かったこれまでの異文化理解の文献と異なり、本書は「評価」や「リーダーシップ」といった、文化の違いが生まれやすい「8つのマネジメント領域」に沿って解説。海外で働く人はもちろん、日本にいながら海外と関わる人にとっても有益なアドバイス、身近なケーススタディが満載です。
職場におけるミャンマーの文化を尊重する
【以下、投資企業管理局(DICA)、ミャンマー・センター・フォー・レスポンシブル・ビジネス(MCRB)、2019年6月発行 「職場におけるミャンマーの文化を尊重しましょう(Respecting Myanmar Culture in the Workpalce)」より引用】
※日本語翻訳版は日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所と JICA専門家の上田隆文氏、制作についてアドバイスを下さった北川真知子氏によるものを引用させていただいた。
Ⅰ挨拶と言葉
- ミャンマーでは年齢や肩書きにより、敬称を使い分けます。男性には「ウー(年配の方)」または「コー(男性への敬称及び少し年上の方)」、女性には「ドー(年配の方)」や「マ(女性への敬称及び少し年上の方)」を名前の前に付けます。
- 簡単なミャンマー語を覚えましょう。例:ミンガラーバー(こんにちは)、チェズティンバーデー(ありがとうございます)、ネェカゥンラ?お元気ですか?)、ネェカゥンバーデー(元気です)、トワメノゥ(さようなら/もう行きます)
- 重要なメッセージを伝えたい時には、あなたが言ったことが相手に理解されているか確認しましょう。多くのミャンマー人は、言われたことを理解していない場合でも、理解していないと伝えることを快く思わないケースことがあります。
- 挨拶やお礼などで合掌をするのはやめましょう。合掌は僧侶へ敬意を払うために使われており一般人に対しては行いません。
- ビジネス上での挨拶は会釈または握手が一般的です。女性の中には握手を好まない方もいますので、相手の出方を見て合わせましょう。笑顔と会釈だけでも問題ありません。
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年齢を考慮し、年上を敬う文化が定着している。
呼称や挨拶も年齢を意識したものを個別に使用しなければならない。
また、ジェスチャーなども仏教の関係からいくつかのタブーがあることから、日本での生活経験があるミャンマー人からあらかじめレクチャーを受けておくと良い。
また普段の挨拶は必ず、ミンガラーバー(こんにちは)、チェズティンバーデー(ありがとうございます)、ネェカゥンラ?お元気ですか?、ネェカゥンバーデー(元気です)、トワメノゥ(さようなら/もう行きます)などのミャンマー語で行わなくてはならない。
IIボディランゲージと身体的な接触

- 頭は、体の中でも神聖な部分だと考えられています。他人の頭部、頬、髪の毛に触れること、頭上で物の受け渡しなどを行うことは無礼にあたりますので行わないでください。
- 目上の方または僧侶の前を遮る際には、軽く頭を下げて通過するのがマナーとされています。
- ぶつかってしまった時や目の前に腕を伸ばす時などは「ガドー(すみません)」や「ガドーノゥ(少しカジュアルな表現)」などと声をかけましょう。
- 足で人や物を指すことは大変無礼にあたりますのでやめましょう。足は体の中でも一番低い場所なので不純と考えられています。
- 物を渡す時は決して投げたりせず、左手を右腕に添えるか両手で丁寧に渡しましょう。
- バケツや桶に直接足を入れてはいけません。足を洗う場合は水をすくって足にかけましょう。
- ミャンマー人は話を聴く際に腕を組むことがありますが、これは敬意を払うポーズとされています。
- 本や印刷物(特に宗教的な資料)は決して踏んではいけません。知識に対する冒涜とみなされます。
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日本では考えられないほど上座仏教の規律を重んじる。
上記の規律は人事にかかわる人のみではなく、全員がおきたいポイントである。
特に頭は非常に神聖な場所で、足を頭より高く上げる、またぐなどは厳禁である。
また、逆に足は不浄なもので、パゴダ(寺院)はもとより、事務所や家などの大切な場所では、靴や靴下を脱ぎ、裸足で入室しなければならない場合が多い。
III服装
- 服装に関してもミャンマーは非常に保守的です。特に女性の場合はスカートの丈にご注意ください。宗教施設では膝や肩が露出しない服装にしましょう。
- オフィス内は土足であがって良いか確認してください。宗教施設や自宅などでは靴を脱ぐのが風習で、演台などにあがる際に靴を脱ぐ人もいます。
- 取り扱い製品の衛生上、タナカ(Thanaka)を顔に塗ることが禁止される場合は、女性従業員に事前通知や説明を行ってください。(タナカは木の天然化粧品で頬などに塗る黄土色のペーストです)
- 制服や職場での服装規定は現地スタッフと相談の上、決めましょう(例:膝丈またはくるぶし丈のスカートが良いかなど)。また、膝上
丈のスカートやハイヒールなどの制服を強制しないようにしてください。/職場での服装はカジュアルな場合が多いですが、政府機関へはビジネススタイルで訪問してください。その場合でも、ジャケットは必要ありません。/ミャンマー人は外国人がミャンマー式の服を着ることを喜びます。例えば、腰で巻いて着るロンジー(男性は“バソー”、女性は“タメイン”と呼ばれる腰布)などを着てみましょう。
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服装は現地の常識的ルールをよく聞いて、ドレスコードなどを慎重に決めていかなくてはならない。
また、日本人でも「ロンジー(巻きスカートのようなもの、男性も着る)」や「ミャンマー式シャツ」などを積極的に身に着けるとミャンマー人のも喜ばれる。
必ず、現地に行ったら揃えておこう。
IV飲食
- 飲食物を勧められた場合、「チェズバ(ありがとう)」や「チェズティンバーデー(ありがとうございます)」などと言って素直に受け取るのが礼儀とされています。
- ミャンマーの職場では食べ物をシェアします。お弁当を同僚と分け合ったり、出張の際はお土産を持って帰るのが一般的です。
- ミャンマーでは、同僚との食事は仕事の一部ではなくプライベートなものと考えられています。
- 多くのミャンマー人(特に女性)はお酒を飲みません。仕事で大量の飲酒が絡むイベントや催し物の開催は避けましょう。
- ミャンマーの人々はお昼時間を大切にします。午後12:30を超える会議の設定は極力避けましょう。
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ミャンマーでは食事、特に昼食を大切にする。
また、家族との食事を大切にし、既婚の女性は仕事のあとの食事会はご法度の場合も多い。ましてや、飲酒などは考えられない。
日本と違って、どうしても懇親会を開催する場合は、勤務時間中に会社の食堂などで実施するか、帰宅の交通手段も会社で確保し、夜8時までには帰宅できるよう配慮したい。
V慣習と行事

- ミャンマーの文化や慣習を笑ったり、嘲るようなことはやめましょう。
- 仏像や仏教絵画の前で軽率なポーズで写真を撮るのはやめましょう。
- ミャンマーの人々は、縁起の良い日を大切にします。オフィス行事(事務所開きなど)の日程を決める際に考慮しましょう。
- 僧侶を招き事務所開きの行事を行う際は、僧侶の昼食を午前11時頃(12時前に昼食を終えるよう)に提供してください。また、客人は僧侶の食事が終わるまで昼食を待ちます。
- 職場内に様々な民族グループや宗教信者がいることに配慮し、それぞれの祝日を尊重しましょう。国で定められた祝日に加え、仏教の祝日、クリスマス、バクリ・イード(イスラム教犠牲祭)、ディワリ(ヒンドゥ教の新年)などにも配慮してください。
- 例年10月と11月の満月日にあたるタディンジュ(Thadingyut)とタザウンダイン(Tazaungdaine)の間は僧院(kahtein)へ共同寄付をしたり、年配の親戚や上司を訪問する風習があります。通常、親戚間では年上がお小遣いを渡しますが仕事関係の場合は渡さなくても問題ありません。
- 一部地域では、従業員が満月の日に休むことを希望する可能性があります。またミャンマーでは、仏教上、7月から10月の間は雨安居と呼ばれ、平日を安息日として祝日扱いとし、代わりに休日を就労日とする場合があるかもしれません。これらについては、業務に支障の出ない方法を従業員と相談して決定してください。
- 宗教上の理由や行事参加のための有給申請は、業務へ支障のない範囲で可能な限り許可しましょう。コミュニティ単位での冠婚葬祭への参加はダイェ ナイェ(Tha-ye-na-ye)と呼ばれるミャンマーの大切な風習です。
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ミャンマーでは食事、特に昼食を大切にする。
また、日本では考えられないほど上座仏教の規律を重んじる。
上記の規律は人事にかかわる人のみではなく、全員がおきたいポイントである。
寄付も盛んで、日常生活の中に根付いている。
また、多民族国家であり、仏教以外の宗教信者も多く、必ず配慮しなければならない。
VI人間関係・職場での慣習
- ミャンマーには相手を気遣う「アナデー」という考え方があり、相手を傷つけないように本音を隠す感覚が根付いています。このため、多くのミャンマー人は本心では怒っていても笑顔を見せます。
- 特に人前でミャンマー人スタッフを叱ったり声を荒げたりしないでください。怒るという行為は弱さとして見られますので叱られたスタッフ共々、面子を失うことに繋がります。
- Yesの言葉を鵜呑みにしてはいけません。ミャンマーの人々は、相手の面子を潰さないようにNoと言わない場合があります。
- ミャンマーでは相手の収入を聞くことは失礼にあたりません。その為、ミャンマーの給与体系は明瞭だといわれています。
- ミャンマーには様々な民族や信仰が存在します。職場内の多様性について学び、特定の信仰や慣習に対する差別がないか確認をしましょう。
- ボーナス制度について法的規定はありませんが、雇用者によっては被雇用者に13カ月目の給与や、クリスマスまたはティンジャン(Thingyan)にプレゼントを渡したり、社員旅行や食事会など様々な方法で社員を激励することもあります。
- ミャンマーでは安全に対する知識や理解が非常に低いです。研修や報酬などを用いて安全対策に関する社員教育を行う必要があります。
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コミュニケーションはきめ細やかで、いわゆる行間を読まなくてはならない。
また、注意を促す際でも、間接的に柔らかく伝えなければならない。
給与額は日本のように個人の秘め事にはせず、すべて周りと共有化する。
日本以上に公正で公平な明瞭な給与体系・評価制度が求められる。
繰り返しなるが、常に上座仏教に係る規則は意識して行動しなければならない。
※仏教の規律以外は日本人にもお馴染みの文化・規則で問題はないと考える。
現地の人としゃべり、現地のものを食べ、現地を歩く

海外で働く日本人のビジネスパーソンには2つのタイプがある。
海外で働く機会を絶好の「異文化理解」のチャンスととらえ、
日本人同士の付き合いはできるだけ制限して
現地の人としゃべり、現地のものを食べ、現地を歩く人
逆に、相変わらず、日本人のコミュニティを守り
ゴルフ、日本食、日本人との付き合いを中心に活動をする人。
当然、ビジネスの世界では、現地の日本人コミュニティの情報・支援が非常に大切であり、
前者と後者のバランスが大切になることは理解している。
しかしながら意識して、前者の「現地の人としゃべり、現地のものを食べ、現地を歩く」比率を増やし、色々な人や現地のイベントに触れ、
その国の「異文化理解」を深めるとともに、その国に寄り添い、いわゆる「応援団」となっていきたいものである。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうざいました。
MASA


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