今回は小売業に35年間従事した実体験を通して
私の考えるところの「小売業とは何なのか」について書いてみたい。
これから小売業を目指す方々の一助となればうれしい。
大手小売業イオンに入社後、店舗営業、本社スタッフを経験。
その後、駐在員として香港、マレーシア、ベトナム、ミャンマーにトータルで12年滞在。
各国で商品部や新規合弁事業の管理担当を歴任。
現在は独立、ミャンマーの最大都市ヤンゴンに居を構え、新規事業の準備中。
小売業の定義

一般的な小売業の定義は以下の通りである。
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小売とは、生産者や卸売業者から仕入れた商品を、最終消費者に販売すること。
小売を行う業者を小売業者と呼ぶ。
(フリー百科事典 ウィキペディア)
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他者から購入した商品を、性質や形状を変えずに、最終消費者に販売する事業。また、その事業者。
(デジタル大辞泉)
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(私が習った小売業の定義)
商品をお取引先から仕入れ、お客さまにお買い上げいただくことで、その頂戴した利益から事業を継続・拡大していく生業。
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※現在では商品開発から小売業が取り組むプライベート・ブランドの構成比が高まっている。
上記の一般的定義については、実際に日々小売業に携わっていて意識することは少ない。
その「目的・使命」「ビジネスモデル」「イオンの小売理念」を頭に置きながら働いていた。
小売業の使命・理念
消費者代位業(目的・使命の視点)
東洋大学の名誉教授をされていた川崎進一先生によると
『小売業の社会的な使命は、流通過程における徹底した合理化により、お客さまが必要とされる商品やサービスを、お客さまに代わって調達し、お求めやすい価格でご提供する「消費者代位機能」を果たすことにある。』ということ。
これは、私の所属していたイオンを貫いていた小売業の使命である。
すなわち、お取引さまをお取り組み先としてWIN―WINの関係を築き、物流過程をお取引さまと自社双方の努力により極限まで合理化する。
そしてお客さまへの販売も、小売業のあらゆる技術を駆使して「より良いものをより安く」ご提供する。
これこそお客さまの代わりに商品を仕入れ販売させていただく小売業の最も重要な使命である。
(参考)消費者代位業としての小売業の戦後の業態変遷

1960‐1980年代
商品の需要に供給が追い付けない、高度経済成長の時代。
家電や日用品、食品などすべの商品が充足されておらず、製造業を中心に企業側からのプロダクト・アウトで消費者に向けて大量に商品が供給された。
メーカーの系列店や、百貨店、GMS(総合スーパー)全盛期の時代。
1990年代~
商品の需要を供給が上回るモノ余りの時代を迎え、今まで供給側が握っていたマーケット主導権が消費者側に移った。
製造業中心に企業側の基準で商品開発を行うプロダクト・アウトから、小売業などのお客さまとの接点に集まる意見・ニーズを汲みとって製品開発、供給を行うマーケット・インの時代を迎えた。
消費者主権の時代を迎えて、小売業の業態も細分化が進む。
百貨店、GMS(総合スーパー)、食品スーパーに加えて、コンビニエンスストア、ドラッグストアや衣料や家電の専門量販店が成長。
同時に、GMSと専門店がモールに一体化したショッピングセンターも急速に展開されていった。
GMSは価格も品揃えも専門量販店に劣り、衣料品はユニクロやしまむらに、家電はヤマダ電機やケーズ電気などの家電量販店に、そして日用品はドラッグストアに、加えて食品もコンビニエンスストアやターゲットを絞った食品スーパーにシェアを奪われていった。
2010年~
ITの発展に伴い、ECが発展、小売業はマルチチャネルやオムニチャネルなどの事業モデルを取り入れていった。
現在ではD2Cなどオンラインとオフラインを融合させた事業モデルが急速に展開されている。
※D2Cなど小売業のDXについては今後、このブログの中でみていきたい。
変化対応業(ビジネスモデルの視点)
これは、コンビニエンスストア業態の生みの親、セブンイレブンの鈴木敏文氏がよく使われた言葉だ。
「消費者が不便、不満、不都合に感じていること、あるいは、感じているであろうと思われることについて、どうすれば、これを便利、満足、好都合に転換できるか、一歩先の未来を描き、それを実現するためには、何と何を結びつければ、新しい価値が生まれるかを考える。これが『未来を起点にした発想』、つまり、跳ぶ発想です。」(※わがセブン秘録 Kindle版鈴木 敏文 (著), 勝見 明 (その他) 出版社 :プレジデント社から引用)
この「未来を起点にした発想(跳ぶ発想)」こそが「変化対応業」の要諦となる。
具体的には、時代に先駆けたお届けサービスのセブンミールやATM事業のみに特化したセブン銀行などすべてこの「変化対応」の賜物である。
平和産業(イオンの小売理念)
小売業は「平和産業」だ。
(イオンのHPより引用)
第2次世界大戦で店舗を焼失した岡田屋は、終戦の翌年(1946年)3月に営業を再開。7月には大売出しを実施しました。そのキャッチフレーズは「焦土に開く」。チラシを握り締めて「やっと平和になりましたね。ありがとう」と涙ぐむお客さまの姿に、当時社長であった岡田卓也(現イオン(株)名誉会長相談役)は「小売業の繁栄は平和の象徴」であると実感。この考えを受け継ぎ、イオンは現在も「平和」を基本理念のひとつとしています。
確かに、小売業は平和があってこそ成り立つ産業である。
米国や欧州、中国、日本は政治が安定し、国内的に治安が安定しているからこそ、小売業が発展している。
内乱や戦争があるところで小売業は育たない。
人間産業(イオンの小売理念)
小売業は日々お客さまに接し、人と人との関わりを基盤とする人間産業だ。
イオンは、教育による従業員の能力の向上が、より高いお客さま満足につながり、同時に職業人としても人間的にも成長することが従業員にとって最大の福祉であると考えている。
私が所属していたミャンマー事業でも創業時、教育は最大の福祉だという考えのもと、考える力(QC活動方式)や商業経営の基礎数字などの教育に全力を注いだものだ。
地域産業(イオンの小売理念)
「地域産業」とは、小売業は地域の文化や歴史、風土を踏まえ、日々のくらしに根ざし、地域の発展や健全な自然環境の維持に貢献することで、地域に不可欠な産業にならなくてはならないということだ。
この考えはイオンの全事業に貫かれており、
ミャンマーにおいても、植樹活動や学校建設、奨学金制度などの環境社会貢献活動に力を入れた。
また、現地に駐在している外国人や一部の高額所得者に対する品ぞろえは控え、ミャンマーにお住いの中間所得層のお客さまに向けた品ぞろえをメインに運営している。
(再)小売業は消費者代位業

流通過程における徹底した合理化により、お客さまが必要とされる商品やサービスを、お客さまに代わって調達し、お求めやすい価格でご提供する「消費者代位機能」で経済民主化を達成する。
私はこれこそが小売業の本分であると信じる。
この本分を実現した米国が世界一豊かで大きな国であることがこれを証明している。
この「消費者代位機能」は小売業におけるDXやD2Cなどが主流の戦略やビジネスモデルになっても変わることのない小売業の本分である。
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■スキマ時間で販売士試験に合格!(リテールマーケティング)
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本日も最後までお読みいただきまして有難うございました。
MASA


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